ショッピングの人類学 -3ページ目

ショッピングの人類学

モノを買い、コトを楽しむ人間の生態を観察する、ショッピング人類学のブログ

いや、人間のはなしではない。本のはなし。

ベストセラーになった本のデザインをまねて、似たような本を出すケースはよくある。
かつて、あの『チーズはどこへ消えた』のあとに続々と出てきた「類似品」などは、その典型。
出版社の方々もたいへんなんだろうが、「恥も外聞もなく」というのは、あのことをいうのだろう。

しかし、『チーズは・・・』が、なぜあれほどに売れたのかは、いまだもって謎である。
本の内容をひとことでいえば、「常に変化する環境に敏感であれ」、これだけ。
たしか帯には、有名大企業がこぞって社員研修のテキストに使ったというが、にわかには信じがたい。これは「フォークロア」(都市伝説)のたぐいか?

さて本題。
『小さな本社』という本がある。日経新聞社から出ている由緒正しき本。
この本の装幀をみてビックリ。
以前、研究仲間と出した『想起のフィールド』という認知心理学の本の装幀と同じではないか!
こちらも、新曜社という人文社会科学系では優良な出版社の本。

ベストセラーの装幀をまねるならまだしも・・・
たぶん、装幀作家が同じだったのだろう。それにしても安易すぎないか?
料理のレシピには、けっこういろんな手順が書いてある。
あれを、ムダを省いて、極限まで圧縮したらどうなるか。

川津幸子さんの『100文字レシピ』という本がある。
和食、中華、エスニック、フレンチ、イタリアン、デザートまで、112品目のレシピを、それぞれ100字で紹介している。


川津 幸子
100文字レシピ

たとえば、

【大根の韓国風そぼろ煮】
サラダ油大さじ1でにんにく・しょうが各1かけのみじん切りを炒め、牛ひき肉150gを炒めたら、1cm厚さのいちょう切りにした大根600gを炒め、水2カップ、砂糖大さじ1、しょうゆ・コチュジャン各大さじ2、塩小さじ1/4を加えて20分煮、ごま油少々をふる。


十分わかる。
「料理のレシピを100字にまとめてみましょう」
齋藤孝氏が喜びそうなネタである。
このネタ、教室で使えそう。
最近、勉強の仕方というものを、あらためて学生に教える機会があった。
受験勉強をあまりすることもなく、気がついたら大学に入っていたという学生が、これからどんどん増えると思う。
彼/彼女らは、どのように大学の講義を聴いたらよいのかがわからないのだという。

そこで、講義の壺をおさえる方法をひとつ。
1.全体の流れを部分との関係を意識しながら聴く。
2.話のキーワードが何であるかを常に意識する。
3.キーワードどうしの関係を意識する。
以上。


これを、物語にたとえてみると・・・
1.物語が喜劇なのか悲劇なのか、どんなどんでん返しがあるか、など全体の流れを大づかみにする。
2.物語の登場人物とその性格や役回りを確認する。
3.登場人物どうしの関係を確認し、もう一度、全体の物語のなかで、さまざまな登場人物がどのような位置づけにあるのかを確認する。


このように、普段われわれがテレビドラマや映画をみているのと同じ感覚で講義をとらえれば、話の壺をおさえることができる。

人の話を聴くときに、細かい部分だけに注目する人がよくいるが、「木を見て森を見ず」のたとえのように、全体をみないと部分の意味がよくわからない。
これは、人に話すときも同じで、全体をわからせてから部分について話したほうが伝わりやすい。
くわしくは、下の本が参考になる。


三森 ゆりか
外国語を身につけるための日本語レッスン

三省堂の『新明解国語辞典』が、このほど全面改訂された(第6判)というので手に入れた。
普段は、持ち運びに便利な電子辞書を愛用しているが、ページをペラペラとめくる感覚も悪くない。

『新明解』といえば、赤瀬川原平の『新解さんの謎』で注目されたが、その「シャープな語釈」(帯のコピー)で定評がある。
よく引用されることばのひとつに、「恋愛」の解釈がある。

れんあい【恋愛】
特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような感情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分ち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。(『新明解国語辞典』第6版)


読んでいるうちに、思わずからだが動いて、身ぶり手ぶりで表現したくなるような演劇的な文章だ。
「新解さん」の面白さはつきない。くわしくは、「新明解国語辞典を読む」というサイトで。

さて、「新解さん」の面白い使い方を発見した。それは本占いだ。
『魔法の杖』という本があるが、これは深呼吸してページを開いたところに書いてある言葉を、その日のお告げにするというもの。いわゆる「ビブリオマンシー」(書物占い)だ。

そこで、「新解さん」を使って書物占いはできないだろうか。
深呼吸して「新解さん」を開く。見開きにある言葉の解釈で笑えれば、その一日はOK。
つまらない言葉でも、その言葉を楽しめるくらいのココロの余裕があれば、その日はヨシとしよう。
ぼけっとテレビを見ていると、いつのまにやらドキュメンタリー番組がはじまっている。

ある男性が、韓国から日本に渡って、大阪の焼肉激戦区・鶴橋で店をだすお話。
辛い修行時代、運命の出会い、貧困、妻の病気、店の繁盛、家族のしあわせ、などなどを淡々と描いている。
しかし、後半になって、妻が病気から回復し、店を手伝いながら、厨房で青汁を飲んでいる場面がでたとき、直感的にわかった。

やられた、これは青汁のCMだ!

案の定、「~さんが健康を保っているのには秘密があります」というナレーション。
次の場面では、家族そろって青汁で乾杯しているではないか。

これがいいたいがために、ここまで引っぱるか!
10分ほどの番組だったと思うが、ホロっとさせておいて、最後に思いっきり宣伝する、「ドキュメンタリーCM」とでもいう分野が登場した。

ちなみに、「青汁.COM」によると、「青汁」とは、「緑黄野菜をすりつぶしたもの(野菜の絞り汁)」の総称だという。
どこかが商標登録しているものかと思ったが、「青汁」という商品は、誰が製造してもいいわけだ。
きょう、JR大宮駅のエキナカにecute(エキュート)大宮がオープンした。
「日々是正でいこう」のmao-ps-bさんによると、品川や立川にも、いずれecuteができるらしい。

オープンする68店舗のなかには、リラクゼーションの店もある。
駅で一息リラックスというわけだ。

数日前、テレビのレポーターがこんなことをいっていた。
「電車を待つあいだに、ちょっとリラックス。マッサージは~分まで~円。それ以降は1分ごとに~円。『もうちょっと時間がある、もうちょっとココを押してほしい』という人には便利です」

しかしだ。
それをみていた我がパートナーが、すかさずツッコミを入れる。
「セコイこというな! 電車待ってるのに、1分きざみで、どこがリラックスできるねん! それに、何分経過しましたって、いちいち計るんかい!」
「ハイ、おっしゃるとおりです」


デパチカ・ホテイチ・エキナカのなかで、エキナカは注目株だ。
しかし、電車待ちをする客をいかに引き込むかが課題。
リラックスと電車待ちはどう両立するか?
「即戦力になる人材を育てる」というのを売り物にする大学が多い。
「即戦力」の内容はというと、おおかた専門的な知識と技能の習得ということらしい。
そして、「即戦力になる」=「就職に有利」という発想だろう。

しかしだ。企業は専門的な知識や技能なんて求めていないのだ。
『週刊ダイヤモンド』2月19日号が「役に立つ大学」という特集をしているが、企業が求める能力の一位は「コミュニケーション能力」である。
だから、「専門的な知識や技能を身につける」=「就職に有利」なんていうのは、大学業界を含めた世間の幻想なのだ(もちろん、エンジニアの世界のように、専門的知識や技能が重要な場合もある)。

では何が本当に重要なのか?
ひとことでいえば、「アタマが動く、カラダが動く、ココロが動く」の三つだ。
つまり、知恵がある(機転がきく)、フットワークがいい、やる気がある・好奇心がある、ということ。


そう、就職には、社会で生きるための「基礎体力」が求められているのだ。基礎体力があれば、その他の力は後からついてくる。
だから、「即戦力」というのは、実は「基礎体力」なのだ。
今日、郵便局に行ったら、「冬のソナタ 写真付き切手シリーズ」の予約をしているではないか。ここにも韓流の波が。

ファミリーマートでも受け付けているようだが。
今回発売されるのは、「vol.1」ということなので、「vol.3」くらいまであるのかな?

「冬ソナ商法」、もうそろそろ勘弁してほしい。
ソフトウェア開発のありかたを考えると、自分をヴァージョンアップする方法がみえてくる。

ちょっと話は遠回りになるが、なぜ、ウィンドウズはウィルスの標的にされるのか?
理由はふたつあると思う。
ひとつは、ウィンドウズがOS市場を独占しているという状況。もうひとつは、マイクロソフトの開発方法と商売のやり方。

まず、いまだにウィンドウズは90%以上のシェアをもつ。これだけ裾野が広がると、慎重にセキュリティに気をくばるヘビー・ユーザーよりも、無防備なビギナーの数がふくれあがる。シェアからいっても、ウィンドウズは最大の標的になるし、億万長者ビル・ゲイツが気にくわないという人間もいる。最大の標的と無防備なユーザー。当然、ウィルスによる被害は大きくなる。

次に開発方法と商売のやりかた。
ウィンドウズ関連のソフトは、便利な機能が付加されたという理由で、ヴァージョンアップを頻繁に繰り返す。つまり、どんどん新しい製品を買わせようというやりかた。しかし、その反面、システムには狙われる穴がふえる。
さらに、プログラムの仕組みを公開していないから、不具合の修正や狙われる穴は、マイクロソフト自身によって修正してもらうしかない。

ウィンドウズにくらべて安定しているのは、リナックス(Linux)。こちらは、オープンソース、つまりプログラムの設計図を公開しているので、世界中のたくさんの人が、不具合を教えてくれたり、改良版をUPするということが行われている。

さて、本題。
自分をヴァージョンアップするということは、まず「自分は弱い存在だ」ということを自覚して、他人に対して自分を開くことからはじまる。

ウィンドウズとリナックスの対比で考えてみよう。
ウィンドウズの場合、自分のなか(マイクロソフト社)で自分の不具合を修正しようとするから、自分では見えない欠点がどうしても存在してします。それに対して、リナックスは、自分の弱みをあらかじめさらけだして、できるだけ多くの人々に、自分の欠点や不具合を指摘してもらおうという姿勢をとる。オープンソースの概念というのはそういうものだ。

自分を開く→他人の意見を受け入れる→自分の改良に役立てる
これが「自分ヴァージョンアップ術」の基本だ。

最近、「コーチング」という言葉をやたら耳にするようになったが、元ラグビー日本代表の平尾誠二氏の本を読んで、はたと気がついたことがある。
心理学者で文化庁長官である河合隼雄氏との対談で、平尾氏はこう発言している。

ラグビー発祥の地でもあるイギリスでは、1840年ぐらいには、教師のことをコーチと呼んでいたそうです。コーチという言葉が最初に出てきたのは、16世紀ぐらいで、当初は馬車のことをコーチと呼んでいました。ですから「目的地に届ける」というのがコーチの基本的な概念です。つまり、馬車がコーチであるならば、行き先を決めるのは乗客である選手のはずなんです。選手自らが決めた行き先に、どういう形でいちばん早く安全に届けるのかを考えてやるのが、コーチの役目なんです。(『「日本型」思考法ではもう勝てない』15頁)

なるほど、たしかに「コーチ」のもともとの意味は「馬車」だ。
乗客を早く安全に「目的地に届ける」こと、これがコーチングなんだ。



平尾 誠二
「日本型」思考法ではもう勝てない